目的と方法:他者の内的特性の把握能力の年齢に伴う発達的変化を明らかにするために、4人の人物が登場する短い紙芝居のVTRを4種類作成し、そこから登場人物の内的特性が把握できるようにした。そして、それを見せて、その後、新規な場面での各登場人物の行動予測と内的特性に関する質問を行った。4人の登場人物とは、N(いつも友だちを叩いたりする子)、NC(意地悪をしたり、意地悪をしている子を叱ったりする子)、P(意地悪されている子を慰める子)、G(意地悪されて泣いている子に自分の物をいつもあげる子)である。行動予測として、いつも意地悪されていた子と各登場人物が6枚ずつクッキーを持っていたが、それを全部相手の子が落としてしまった時の分与個数を求めた。 結果と考察:3歳児・4歳児・5歳児・小学2年・小学5年・大学生に実験を実施した。その結果、最も意地悪だと思う子、もっとも優しいと思う子、最も弱いと思う子についての把握は、全ての年齢群で有意な差は見られなかった。内的特性の把握が反映されるであろう行動予測に関しては、いくつかの年齢差が見られた。小学生と大学生は、N<NC<P<Gの順に多い分与個数を予測した。しかし、3・4歳児はNに有意に少ない分与個数を予測したが、それ以外には有意差は見られなかった。また、5歳児は、N<NC=P<Gの順に多く分与個数を予測した。3歳児でも、他者の内的特性を把握し、それに基づいて行動を予測できることが明らかとなった。また、その把握方法は年齢とともに変化することが明らかとなった。つまり、NCに対して、幼児はポジティブな人として把握しているが、小学生以降になるとネガティブな人として捉えるようになると考えられる。また、PとGについては、3・4歳児は両者を区別せずポジティブな人として捉え、5歳児以降になると両者を区別し、年齢とともにより明確に区別するようになると考えられる。
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