本研究では、「あいまい」な情報下において、社会的行動における意思決定過程がどのような様相を示すかを分析し、その過程の心理モデルを作成することを主目的とした。 本研究では、まず、我々が意思決定において情報の曖昧性を感じるのはどのような状況なのか、あるいはどのような情報に曖昧さを感じるのかを質問紙法や面接法によって明らかにした。つぎに、種々の通信メディア状況(電話、映像通信、体面)で曖昧な情報が提示されたとき、どのような意思決定をするのかを心理実験によって、明らかにした。その結果、曖昧な情報が提示された時の意思決定は、どのような通信メディアを用いても、系統的なバイアスがあることが明らかになった。また、情報モニタリング法を用いた過程追跡実験では、曖昧な情報下において、どのような意思決定のプロセスを経るのかを明らかにすることができた。これらの検討の結果、曖昧な情報下において、人々は、特定の情報への注目を行ったり、曖昧な情報の主観的な解釈を行ったりすることによって、フレーミング効果や選好逆転などのバイアスを生じさせることが明らかになった。最後に、これらの研究結果をもとにして、曖昧な情報下においての意思決定過程の定性的な心理モデルを作成した。
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