第1に教えることに対する信念の熟達化による変化の検討、第2に実習場面ならびに熟練教師の授業観察と面接、第3に第2の研究をふまえての熟達段階による思考過程の変化の検討の3調査計画を立てていた。 まず第1の比喩を用いた信念研究に関しては、教職課程未受講大学生53名、小学校教職課程受講大学生79名、中・高校教職課程受講大学生87名、高校新任教師53名、小学校中堅・熟練教師50名、中・高校中堅・熟練教師22名の計344名の協力を得て調査を行った。その結果、学生と現職教師では現職教師は時間の流れや展開に沿って授業を捉えるのに対し、学生では授業によって生起する感情を中心にしてイメージするなど授業を捉える観点が異なること、まだ学生と新任教員では授業を「伝達の場」として捉えているのに対し、中堅教員は「共同作成の場として捉えていること」、また小学校教員と中・高校教員でもイメージには違いが見られ、後者ほど「伝達の場」としての認識が強いことが明かとなった。 第2の課題に関しては、小学校2年生同一学級を対象に熟練教師と実習生が行った国語の読みの授業をビデオで撮影し、その授業会話の言語記録を作成し、分析を行った。そして子どもの発言の受けとめ方、指名の仕方、発問の仕方などに顕著な違いがあることが明かとなった。さらに、それらの背景となる知識や授業観を検討するため、半年間毎月1度の割合で熟練教師1名の授業をビデオにおさめ、面接もあわせて行った。現在この当該熟練教師の知識とそれらが授業での思考や行動にどのように反映しているのかを検討しているところである。 第3の課題に関しては、第2の課題で授業のビデオを撮影したので、この中から最も新任教師と熟練教師の思考を比較検討するのに適当と思われるビデオを選定し、調査実施の準備を行っているところである。
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