本研究では、日常的なセルフ・コントロールの個人差を評価する尺度(Redressive Reformative Self-Control Scale:RRS)の実際的な妥当性を検討した。結果は、以下の通りである。 1.RRSを構成する「調整型セルフ・コントロール(以下、調整型SC)」と「改良型セルフ・コントロール(以下、改良型SC)」という2種類の下位尺度得点によって分類した4群の被験者は、いずれも群に特異的なセルフ・コントロールの行動傾向を示した。この結果は、セルフ・コントロールが2つの種類に分けられること、したがってその個人差は2種類のセルフ・コントロールのいずれにも着目し、2次元に評価すべきであることを示す。 2.本研究の結果にもとづき、2種類のセルフ・コントロールが機能している状態を記述すると以下のようになる。(1)調整型SC:短期的な状況で発生したストレス状態に対処し、情動的・認知的な妨害要因の影響を低減できている。(2)改良型SC:より自発的な問題設定にもとづき、目標志向的な行動が実行された結果、比較的長期にわたり基準値以上の水準で標的行動が維持されている。 3.2種類のセルフ・コントロールともにレパートリーの多い被験者は、改良型SCを成功させるための方略として調整型SCを適用していた。この結果は、改良型SCの持続が、同時にどの程度調整型SCを採り入れているかにかかっているという仮説的見解を支持するものである。 調整型、改良型それぞれのセルフ・コントロールの形成、促進だけでなく、これらの組み合わせに関与する要因の解明と、適切な組み合わせ方の検討が今後の課題であろう。
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