研究概要 |
「個性重視の教育」実現に寄与すると思われる多様な教育方法(個別化指導,個性化学習,協力教授など)が,児童・生徒の学習動機づけに及ぼす影響を,従来の一斉指導との比較を中心に検討した。 具体的には,いくつかの先進校を繰り返し訪問し,教師(主にカリキュラムや指導の実施体制)及び児童・生徒(授業を受けての感想や要望など)を対象とした聞き取り調査を実施した。また,合せて授業をVTRで録画し,授業分析を行うことにより,多様な教育方法の下でと,一斉指導の下での,児童・生徒の学習活動の違いを検討した。 その結果,以下のことが明らかとなった。 (1)自由進度学習など様々な一人学びの場面は,自分のペースで学習活動を進められる教育方法となっており,これは行動に対するコスト感の低い学習環境を提供する。 (2)適性処遇学習など,自分の学習スタイルに適合した方法で学べる教育方法は,効力感を感じやすく,行動と結果の随伴性を感じやすい学習環境を提供する。 (3)課題選択学習,課題設定学習,自由研究学習など,自分で学習方法や学習内容を選択・決定できる教育方法は,自己決定感を感じやすく,自由で開放的な雰囲気の学習環境を提供する。 (4)上記のような学習環境の下では,児童・生徒は,(1)活動の開始が早く,(2)実際に学習活動に従事している時間の比率が高く,(3)活動にも粘り強さや独創性が認められた。 (5)各教育方法が,上記のような特質を有し,さらに児童・生徒の学習動機づけに好影響を与えるか否かは,学習材の量と質,活動中に教師が行う児童・生徒への関わりの程度と質に大きく左右され,単にある方法を導入することが,必ずしも学習動機づけを促進するものではない。
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