子どもにおける、皆と同じでという自己の同調性の大きさや、自己と違う相手を認めるという異質性の受容力の少なさなど、現在の少子の問題について、本年度は主に、家庭という場面を取り上げて検討を行った。対象は保育所、幼稚園に通っている3才から5才の子どもとその親であった。方法は質問紙調査と対面調査を用いた。まず、「自分と違う」相手の気持ちを推し量るという共感性の発達について、少子時代の現代、兄弟の有無や親の関わり方によって違いがあるかを検討した。一人っ子、年下の兄弟のいない末っ子、年下の兄弟のいる子などで共感性の高さに違いはなかった。しかし、親が子供に絵本の読み聞かせや会話を通してコミュニケーションをしている場合には、自分の感情とは異なる他人の感情の類推という共感性能力が高かった。次に、他者と同じでありたいという同調行動について調べたところ、すでに、3才から5才の子どもたちにすでにその同調行動が生じていることがわかった。特に、実際に他者(保育所では他の幼児)が存在して行動する場合に同じ行動をとろうとするだけでなく、実際に他者がいなくても、「お友達は……していたよ」という口頭での情報を与えられるのみで、子どもは自分の行動を他者と同じ方向へ変えることが大変多く見られることから、低年齢の幼児における同調性の強さがわかった。 さらに、親の影響の中でも、現代の少子家庭は、祖父母等、親に代わる人間の存在も少ないため、父親の育児参加の影響力は大きく、父親が育児に参加してないと認知する母親は、育児に対する認知もネガティブであり、それが、さらに少子の社会心理的発達に影響を及ぼすことが示唆された。
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