研究概要 |
日本におけるタイ人労働者の数は、不況下にもかかわらずあまり減少することはなく,法務省入国管理局の発表でも1994年11月1日現在のタイ人未登録残留者の数は46,964人と国別では最も多くなっている。(1994年5月1日と比べても約3,000人の減少にすぎない。)また,男女比もほぼ半々となり,売買春や人身売買,エイズなどの問題でよくとりあげられるタイ女性だけではなく,男性労働者も重要な問題となってきていることを示している。 このような日本での未登録(不法)残留の問題は,タイでもよくとりあげられるようになり,タイ政府も渡航自粛キャンペーンを行なうなど広報活動につとめているが、成果はあがっていない。それは、タイ女性がだまされて日本に連れてこられたあげく売買春を強いられるというこれまで典型的と考えられてきたパターンがもはやまれなものであり,タイ人労働者を受け入れるネットワークがすでに確立し,確信犯的に日本にやってくる場合がほとんどとなってきているからである。このような状況の中で,タイ人労働者の定住化が確実に進行している。 本研究では,東京(新宿周辺および入管周辺),横浜,長野,つくば等で聞き取り調査を行なったが,タイ人労働者の就業を斡旋するのは多くの場合タイ人のブローカーであり,彼らはタイでも同様の仕事をしていたケースが多い。またタイ人の定住化が進行している地域には必ずタイからの輸入品(食材,雑誌,ビデオ,衣類など)を扱う店やタイ人相手のレストランがあり,そこが情報交換の場となっていることが明らかとなった。
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