本研究の目的は、労働力配置政策が本格化した1939(昭和14)年以降を主な対象時期として、以下の諸点、すなわち(1)職業指導の機構の態様の変化に焦点を合わせ、そこに内在する所轄官庁たる内務省・厚生省・文部省等の政策意思を把握すること、(2)労働力配置政策との関連における職業指導の展開過程の実相を把握すること、(3)職業指導の展開を支えた理念の特質を把握することを通じて職業指導の機構と機能を把握することにある。本年度は、基礎的史料の所在調査および収集を全体の目標に据え、以下の諸点に関する調査研究を遂行した。 1.職業紹介所と高等小学校の連結構造の解明を主眼として、(1)『公文類聚』・『公文雑纂』等により基本法令たる「職業紹介法」の制定・改正に関わる公文書、(2)『内務厚生時報』・『文部時報』・『職業時報』等により関連各省庁の通達文書について調査研究を行なった。 2.労働力配置政策と職業指導の関連構造の解明を主眼として、(1)各種の労働関連統計文書等、(2)学校文書・学校史等について調査研究を行なった。 3.職業観・労働観の歴史的特質の解明を主眼として、(1)職業指導用教科書・教師用指導書等、(2)『職業指導』誌を中心とする大日本職業指導協会刊行著作、(3)『帝国教育』誌等の教育研究・啓蒙誌について調査研究を行なった。 4.以上の調査研究から得た知見を総括的に述べれば、職業指導をめぐる諸事実は、職業指導に内在する論理によってではなく、個々の政策課題に適合する論理によって基礎付けられていたということである。具体的な青少年動員政策の展開に応じた職業指導の機構と機能の把握とその史的叙述とが今後の課題である。
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