3カ国の国家間の教育関係を時系列的に比較しようとする本研究は、(1)国際教育流動(留学等)の局面と(2)カリキュラム移植に関する局面の研究をほぼ終了した。(1)に関してはすでに京都大学教育学部紀要第40号(1994)に発表したとおりであるが、本年度の研究において、特にマレーシアの大学において教員を積極的に欧米の大学でPh.D.等の学位のための留学・研修に送り出す各種プログラムの実態について継続的知見が得られた。 (2)カリキュラム移植の局面では現地調査に加え、マレーシアの中等理科教科書・指導要領のコンテント・アナラシス(内容分析)を行い、教育内容に及ぼす国際的影響についての分析を行った。それによって、(1)マレーシアにおける中等カリキュラムは欧米型方法普遍的アプローチとアジア的(イスラム的)内容普遍的アプローチ(価値観の吸収プログラム)の混在型に移りつつあること、(2)それによって、教師と生徒の双方に新たな負荷が加わったこと。(3)日本の教育カリキュラム等の影響は戦時中を除いて顕著な証拠は得られず、教育内容において若干の日本に関する記述が増加したことが認められた程度であった。これによって、教育の場面において経済的従属と教育的従属が密接不可分に結び付いているとする、従属理論の立場は(1)での結論と同様に支持しがたいものとなった。結果は第30回本比較教育学会(筑波大学)等で発表し、京都大学教育学部紀要第41号(1995)に掲載された。 本研究は次の段階として(3)試験制度と教育言語の局面に焦点を当て、マレーシアの試験制度に及ぼす日英(米)の影響と教育言語の選択の背景について、再び現地調査と文献研究を行って行く計画である。
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