筑波技術短期大学の聴覚障害学生約100名を対象とした発音指導及び発音検査の分析結果から、幼少期の聴覚障害者児の発音指導について下記の問題が明らかにされた。 1.基礎的な発声と呼吸…聴力の程度から推察してより早い時期に適切にフィッティングされた補聴器を装用していれば改善されていたと思われるケースが目立った。具体的な問題点は下記の通り。 (1)吸破:発音訓練を行った学生58名中4名にこの癖が見られた。4名ともスピーチにおける破裂音で吸破が出現していた。適切な息継ぎが習得されていないため、日常会話レベルでの矯正は容易でない。なるべく早期に発見し矯正することが望まれる。 (2)頭声:発音訓練を行った学生2名にこの傾向が認められた。これもスピーチレベルでの矯正は困難であり、幼少期における発声訓練の中で矯正する必要性を感じる。 2.単音節明瞭度とスピーチ…単音の明瞭度が高いほど音読の評定値も高い傾向が認められたが、単音節明瞭度に比して音読の評価値が相当低い事例も少なからず認められた。仮に音読の評定値が日常のスピーチの明瞭度を反映しているとすれば、発音の指導及び検査に際して、次の点を考慮する必要があろう。 (1)指導に際しては、単音の明瞭度の向上に終始せず、音のわたりや韻律的技能(リズム、テンポ、ポ-ズなど)の指導を行っていく必要がある。 (2)発音の評価に際しては、単音節明瞭度検査と併せて音のわたりや韻律的な技能を評価するための検査を実施することが望ましい。
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