中国の高等教育システムは普通高等教育と成人高等教育の2本立て構造を呈している。この両タイプの高等教育では、設置形態、大学種別、教育プログラムの編成、地域的分布などにおいては、それぞれの特徴を持ちながら、補完関係を持っている。しかし、高コスト構造の点で共通している。 効率を重視する市場化経済の波に揺られ、普通高等教育も成人高等教育も厳しい環境に置かれ、中国の高等教育政策はいま急激な改革を実施しようとしている。その改革の内容は『中国教育改革・発展要綱』に盛り込まれ、その特徴を一言で言えば、高等教育に対する市場メカニズムの導入、あるいは「市場化」である。このような改革は中国の経済社会の急激な変化に高等教育が対応するために、ある程度は不可避の選択であったとともに、国際的な高等教育改革の動向にも影響をうけたものであった。そして高等教育の実体も、そのような方向に向かって急速に変貌しつつある。しかし同時に、そのような変化にともなう深刻な問題も生じつつある。すなわち高等教育機関における混乱、高等教育の質の確保、そして教育機会均等の問題である。これらが現在の政策の延長上でいずれ克服されるべき問題であるのか、あるいはその方向自体に疑いがもたれるのかは、まだ予断をゆるさない。しかし日本の経験をみるかぎりでは、いったん始まった高等教育の「市場化」は、もはや後戻りをゆるさないのではないかと考えられる。
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