本研究の目的は、視覚障害児・者の読書効率を最大限に引き出すための読書環境評価システムを開発することであった。「弱視用知的リーディングエイドの開発」研究(平成5年度科学研究費奨励研究)ですでに蓄積してあった手法を応用し、読書効率を最大限発揮できる条件を明らかにするための総合的な評価システムを構築した。すなわち、1)コンピュータを用いた評価システムと2)文字サイズの評価に焦点を絞った冊子版の評価票を開発した。コンピュータによる評価システム普及型のパソコンで利用可能なソフトウェアとして構築し、試作版をフリーソフトとして配布できるようにした。また、読書に適した文字サイズを判断するための冊子版評価票は試用実験を実施するために50部作成した。これらを用いて、学校、福祉施設、研究機関で試用実験を行った。その結果、a)この評価システムを用いれば、それぞれの視覚障害児・者にとって最適な読書環境を客観的に調べることが可能となること、b)評価結果は、拡大写本や手作り教材等の作成に応用可能なこと、c)「弱視用知的リーディングエイド」の条件設定が容易にできること、d)研究的な用途だけでなく、学校や福祉施設でも簡便に活用できること等がわかった。操作が簡便であるため、学校や福祉施設でも評判がよく、これらの手法を臨床場面に定着させる上でも貢献できたと思われる。これらの研究成果は、弱視教育、特殊教育学会、弱視教育全国大会、視覚障害リハビリテーション研究発表大会等で発表した。
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