『羅山先生詩文集』についての読解メモに加えて、『詩文集』以外の主要な著述について、特に内閣文庫に所蔵されている『羅山先生元集』・『羅山外集』・『羅山先生別集』・『羅山残稿』も写真を取り、その上で読解を試みた。そのほか活字資料については、書籍購入やコピーによってだいたい揃え、各地図書館への調査と紙焼き本の作成により、さらにさまざまな資料の収集につとめた。そして、羅山の人生における事績を年代順に列挙する年譜を作成した。さらに、(a)羅山の年齢(著述の内容や関心のありかたの変遷)、(b)著述内容の分類(広範囲な事物への好奇心の深層にある意識の変遷)、(c)関係する人物(啓蒙書・詩文製作の依頼者や詩歌贈答の相手等)に着目し、それへの見通しが反映されるように、年譜の記述を工夫した。またその際、従来思想家としての側面が強調されがちだったが、文芸的な側面にも多々光を当てることができたと考えられる。 今回に作業においては近世初期のあらゆる重要人物と交友を持ち、政治・宗教・外交・学問・文芸などさまざまなジャンルと取り組んだ羅山像の価値をあらためて確認するとともに、その人生の軌跡を細密に描く手がかりを得たと思われる。今回論文化したのは羅山二十五歳までであるが、今後は、(a)(b)(c)の資料分析作業をさらに立体的に行ない、かつ個別に深めつつ、より一層年譜の記述を整備していくことで羅山の人生についての考察を深めていきたいと考える。
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