「花月新誌」や「東京新誌」な代表的な明治初期漢文雑誌記事のリストを作成し、記事内容による初歩的な分類をおこなってデータベースソフトに入力したが、従来の枠組みには収まりきらないジャンルへの試みが漢文体でなされていることが注目された。歴史叙述と筆記小説との区分がなくなっていくこと、時事性もしくは報道性をつよくもつジャンルが登場していることなどが、このリストによって明らかになり、さらに詳細な検討を経ることで、明治における文体の問題を考える上での有用な資料となるであろう。また、研究を進めていく過程で、明治初期の漢文に用いられる語彙が、翻訳漢語や白話語彙系のそれと密接に関わっていることが確認され、文体論的観点から、語彙の収集および整理にあたっている。ただし、この問題を考えるには、江戸期の漢文との関係を視野におさめる必要があり、また、漢文を効率よく処理できるコンコーダンスソフトが存在しないため、作業量は膨大なものとなっており、今年度中に完結することはできず、引き続き作業を進めていく予定である。とはいえ、上記のジャンル論の問題も含めて、ある程度の傾向は把握しつつあり、若干の検討期間を経て、その成果の一部を論文として公表する予定である。
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