本研究の主要な成果について記す。 1.現代日本語の研究における大規模な電子化コーパスの利用を可能にするためのソフトウェアを開発した。このソフトウェアは、前年度までに試作を終えていたものをさらに発展させたもので、『朝日新聞記事データベースCD-HIASK』(紀伊国屋書店・日外アソシエ-ツ)の1987年度から1992年度までの版に収められた記事データを読み出し、通常のテクストファイルとしてハードウェア上に展開するものである。これによって生成されたテクストファイルには検索を始めとして任意の処理を施すことができる。我が国における電子化コーパスの利用は世界的に見てはなはだしく立ち遅れており、本ソフトウェアの開発の成功はそうした状況に対する大きな貢献を意味するものである。 2.上記のソフトウェアを利用して、現代日本語の述語の形態論についての詳細な調査・分析を行い、論文の形で発表した。一般の文法書では、「〜です」の否定形を「〜ではありません」とすることが慣例化しているが、現実には「〜ではないです」の形もしばしば用いられる。本研究では、上記のデータベースから否定形の用例数万例を採取し、形式の使い分けに関わる諸要因を種々の角度から解明した。また、そのほかにも、副詞・形容詞などの意味・用法についても分析を試みた。これらの分析結果についても、発表すべく用意しているところである。
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