本研究では、一般人が抱いている方言使用領域に対する認識のデータを数量化し、その処理をコンピュータ化することによって、日本各地の話者が抱いている方言認知の実態を把握し、その地域差を明らかにすることができた。研究は大きく、(1)各地のデータ収集と、(2)コンピュータプログラムの開発、データの入力と集計、(3)データの分析の3段階に分けられる。 自ら開発した方言認知地図の集計プログラムを開発し、日本各地から1000人以上のデータを収集した。調査対象の地域は東京、名古屋、岐阜、金沢、大阪(若年層と中年層)、広島、福岡、鹿児島であった。1994年の6〜8月にかけて、入力時間を大幅に短縮する「県境地図の置換え機能」を加えた増訂版のプログラムを開発した。方言認知地図という新しい研究分野、及びその処理プログラムについては『パソコン国語国文学』で発表し、同書についているフロッピ-に方言認知地図のデモ用プログラムも含まれていた。また、1995年3月に大阪大学文学部に提出した博士論文に方言認知地図の調査結果の徹底的な分析が含まれている。(この論文は1995年度中に出版する予定である。)ここでは、日本全国レベルでの、地方差、性差、年層差による方言認知領域の違いを追求している。さらに、近畿版の調査も行ない、話者の認識による近畿諸方言の細分類を分析した。 また、方言認知領域と実際の方言事象の地理的分布との比較をするために、1994年10月に「若年層の京阪方言全国分布地図集」を発表した。
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