都市の法システム、特に借地借家法が、住宅・土地市場に与えている影響を中心に調査分析を行った。具体的には、1992年に改正された借地借家法の前後を通じて、正当事由制度及び賃料改訂ルールには変化がないことを論証したうえで、これらに関する主要な判例を網羅的に調査した。この結果、正当事由の判断はきわめて個別性が強く、法則性を判例から読み取ることができないこと、立退料についても具体的な金額の予測は困難であること、賃料改訂の特約は実質的には意味をもたないこと、裁判所による継続賃料の判断は常に市場賃料よりも抑制されること等が明らかとなった。これらを踏まえて、賃手の供給行動が強く抑制されることにより、賃貸市場の縮小、持家市場の肥大化が生じているとの仮説を提示し、データ、モデル等により具体的にこれを論証した。 また、改正借地借家法により創設された定期借地権制度についても、土地利用更新、住宅・土地市場の流動化に対してどのような効果を果たすこととなるか、又の際の留意事項は何かについて論じ明らかにした。
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