研究概要 |
1.日米の信託収益課税制度の差は、両国の信託に関する実体法およびそれに関する行政的規制の違いにも、その多くを拠っている。本研究の前提として既に明らかにした、わが国の信託収益課税における「受託者非課税の原則」は、わが国において信託を業として営むことができるのが原則として信託銀行に限られ、それらが金融行政当局の法律上または事実上の厳しい規制下に置かれていることと密接に関連している。 2.(1)これに対して、米国の信託課税は、原則として受託者に日本のような意味での直接的な行政的規制が及ばないこと、および「事業」を受託財産となしうることを前提として、原則として「信託」を一個の納税主体として捉え、例外的にこれを課税上「導管」として扱うこととしている。ここにわが国の信託収益課税制度との構造的な違いが存することが判明した。 (2)「例外的」に信託が納税主体とされないのが、投資信託の場合である。これは、その本質上「導管」であるとされる場合(判例はそのメルクマ-ルを受託者に「投資内容の変更権限がない場合」としている)と、RIC(Regulated Investment Company),REIT(Real Estate Investment Trust),REMIC(Real Estate Mortgage Investment Conduit)等、特に立法によって認められる場合とがあることが判明した。 3.信託が一個の納税主体として扱われる制度の下では、委託者から信託への財産の移転が重要なtaxable eventとなる。この点が米国的な制度のわが国への導入の可否を考える際に大きな問題点となることが、本研究の結果得られた、次のステップというべき問題の展望である。 なお、以上の研究を進めるにあたり、多くの資料を保存し、かつ、それを迅速に処理する必要から、大容量の記憶装置と高い処理能力を備えた機械の購入が必要となった。
|