わが国においては、民法上の公益法人が行政上の権限を与えられ、行政機関として活動する事例が増加してきている。これを指定機関というが、指定機関は、民間の法人でありながら、諸種の試験、検査検定、登録などの業務を担当し、行政処分権限を含む行政権限を行使することを法令により授権されるというきわめて異例の現象である。これらの機関は、行政作用法上は処分を行う行政庁として行政手続法などの適用の下に活動し、その行う処分は、行政不服審査法、行政事件訴訟法および国家賠償法などの行政政済法の対象となる。また、組織法上は、国・地方公共団体と別組織の、それも民間の法人でありながら、これらといわば行政組織内部の上級機関下級機関の法関係におかれ、行政内部法的な監督関係におかれることになっている。この組織法上の監督関係は、行政手続法上は、4条3項で、行政組織、特殊法人に対する監督とならんで、適用除外とされることによって、本研究で扱った法現象が法制度上再び確認されることとなった。わが国の指定機関は、それぞれの法人の歴史は浅く、ドイツの技術監視協会などのように権威を持った民間組織として形成されて来ているわけではない。 一方、ドイツにおいては、伝統的に、類似の法人として、技術監視協会が様々な検査・試験権限を一手に独占して遂行してきた。技術監視協会は、民間の互助組織として形成されてきたものであるが、最近では、別の民間組織も(例:DEKRAなど)、規制緩和により参入してきている。さらに最近では、連邦政府により、郵便、電気通信、データベース管理、公道建設管理などを担当する特殊法人が形成され、それらに対し、行政処分権限を含む行政権限の委任される現象が出てきていることがあきらかとなった。 なお、本年度は、わが国の指定機関については、その法システムを通常の行政法のテキストにもおりこんで、行政法的な分析を加えたものも執筆している。
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