I 本年度の研究は、「ドイツ広告法」に重点を置くとともに、EC諸国およびその他隣接国の広告規制をも対象とした。比較法的研究である本研究作業の基本的な部分を押さえた。その概要を以下では述べる。 II 我が国においては、広告を一般的に規制する包括的な立法はない。また外国ではそのために重要な役割を果たしている不正競争防止法も、我が国では広告規制、消費者保護という点では十分な機能をしていない。この点で、不正競争防止法の役割を我が国でも再度見直し、消費者保護に役立つようにその機能を変化させねばならない。不正な広告の類型を明確にする必要がある。また、契約上の保護も重視される。ドイツでは不正競争防止法の改正において誤解を招く広告によって契約を締結した消費者個人に当該契約を解除することができる権限が認められる。さらに、ドイツ法では不正な広告の類型は、不正競争防止法に固有の制裁が発動する要件でもあり、また消費者権ともいうべき権利(内容的は、民法上の解除権)を発生させる。 ドイツ法の状況を知ることで、今後の我が国の広告規制の方向性を模索する上での課題が理解できた。 III 最近、広告に関する自主規制がバブル崩壊後の不況という経済的な要因から崩れており、広告規制を行う包括的立法および不正競争防止法の改正提案は必要である。 IV 市場統一を控えるヨーロッパ諸国における広告規制に関する知識は、我が国の企業が現地でマーケッティングを展開するためにも不可欠の前提となる。 V ドイツ不正競争防止法とそれに含まれる広告規制を、手続法的側面と実体法的側面に分けて分析した。わが国においても詳細な不正競争行為の類型の構築がなされるべきであろう。
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