1.本研究は、技術の時代に於ける「政治的なるものの変容」、人的共同性の基盤についての見方の変遷を追うという視角から、二十世紀政治思想史を通観する鳥瞰的パースペクテイヴを与える「通史」の叙述を目指す研究計画の一環として着手されたものである。平成六年度におけるこの計画の遂行において、こうしたパースペクテイヴとして、以下のような観点が重用であるという結論に至った。 (1)社会思想における技術の「イメージ」の受容が、技術主義的なユートピアと逆ユートピアの想像力の源泉として如何に機能してきたか。 (2)社会の構成原理の基本イメージのメタファーとしての「大工場」と「市場」との対立。 (3)哲学におけるシンボルの事物に対する優位。ないしは両者の乖離の危機感。 (4)人間像における「シンボルとしての人間」の「生き物としての人間」に対する勝利とそれへの反動。 (5)政治における「大社会」の社会としての共同性にたいする危機感。とりわけ、1)メディアによってのみ繋がれたものとしての社会の不安定さ、2)代表民主政における代表への危機感と新たな代替的可能性への試み。 今後は、とりあえず(1)のテーマを中心に具体的成果として結実させたいと考えている。
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