研究概要 |
筆者は,戦時行政について,戦時的特殊性よりもその現代的普遍性の解明に焦点を当てて研究をおこなってきた。その結果,行政目的という点においては戦時的と戦後とでは大きく異なるものの,行政の専門分化の進展とそれを実現するための行政手段という点についていえば戦時期と戦後との連続性は大きく,その意味で,戦時行政は現代日本の中央-地方関係のひとつの始点として捉えられるべきであるとの見解を有するに至っている。現在のところ筆者は,こうした視点に沿って日本の中央-地方関係史の本格的な捉え直しをすることが必要であると考えている。やや詳しく言えば,現代日本の中央-地方関係は,(1)戦時期から占領期にかけて進展した機能的集権化-行政の専門的処理の要請に応じてなされる機能別の中央統制手段の増大(出先機関や補助金の増大など)-と,(2)占領期における内務省の権限喪失過程(戦後第1次〜第3次地方制度改革)により大きな変容を遂げ,内務省が知事の人事統制権をもつが行政の個別的機能に対応した技術的監督統制手段が未発達であった戦前の集権体制は,個別の行政機能ごとの統制手段の発達した戦後型の機能的集権体制へと変質(温存ではない!)したと考えている。筆者は,すでに,この視点に立って,学会発表「占領改革における集権と分権-現代日本の中央-地方関係史に関する-試論-」(日本地方自治学会,中京大学,1994年11月13日)を行ったが,現在,「温存か変容か-日本の中央-地方関係史の見直しのために(仮題)」(日本地方自治学会編『地方自治叢書8』掲載予定)を準備中である。
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