1970年代末以来、先進産業諸国では、構造的な財政難を背景に、政府活動の量的拡大を抑制し社会全体としての効率を高めるための努力がつづけられている。その一つの結果として、公共部門(第一セクター)と、民間営利部門(第二セクター)、民間非営利部門(第三セクター)の相互浸透領域の拡大がある。これらの3つのセクターの隣接領域に生じる4つの相互浸透領域は、行政の発祥と同時に形成されたといってよいほどの歴史をもち、制度化され確認できるものでは11世紀(イギリスの諸問委員会)に遡る。なお、以下で指す相互浸透領域の大小は、法人格をもつ組織の数を指標としており、非制度的な関係を含むものではない。 しかし、この約20年間における相互浸透領域の増大は、行政国家の成熟と行政活動の非効率を前提としている点で、従来の相互浸透とはその目的において方向性が逆転している。行政が政策の執行から形成にいたる過程で実質的な影響力を高めると同時に、行政活動の細分化、個別化、サービス行政化が進行するなかで、行政活動の効率性を維持するための方策なのである。地方政府では、福祉衛生保健を中心に政府と、市民すなわち民間非営利部門(第三セクター)との融合部分が拡大している。また、まちづくりを中心に、地方政府、地元市民、開発事業者の3者すべてが融合するアドホックな組織も増大している。一方、中央政府レベルでは、公益法人のうち行政機能を補完している団体の数が以然微増しているものの、特殊法人や認可法人の数および規模が緩やかではあるが削減される方向にあり、全体としては縮小している。 80年代以降、わが国の3つのセクターが重複する4つの相互浸透領域は、中央政府レベルと地方政府レベルでその変化が異なっている。中央政府レベルでは、大部分を占める第二セクターとの間の相互浸透領域が縮小傾向にあり、地方政府レベルでは、第二センターとの相互浸透領域・第三センターとの相互浸透領域ともに増大している。とりわけ後者での伸びが大きい。また、地方政府レベルでは、政策執行機能を担う組織が多く設立されている。
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