今年度の研究実績は、以下の通りである。 1.本年度の研究は、環境を考慮した経済における定常状態の性質を分析することが主であった。具体的には、大沼(1992)で提示されたモデルを用いて、いかなる定常状態が最も効率的なものであるかの考察が行われた。このモデルは、今日の環境問題を象徴する次の二つの特徴が含まれている。一つは、環境悪化が、生産によってなされ、それが将来世代の厚生に影響を与える、というものである。もう一つは、現世代が消費や投資を犠牲にし、環境再生のための資源として用いることにより、そのような環境悪化を小さくすることが出来る、ということである。このような体系の元で、最も効率的な定常状態は、消費と環境悪化との間の限界代替率が、自然の環境悪化減少率と資本の限界生産性の和に等しくなるところであることが明らかにされた。この定常状態を「環境の黄金律」と呼ぶ。 2.つぎに、大沼(1992)で導出された最適経路の定常状態が、この環境の黄金律と実は、一般に一致することが示される。すなわち、環境の黄金律が、到達可能かつ維持可能であるならば、つねに「持続可能な発展」としての最適経路の定常状態は、常に環境の黄金律となるのである。 3.以上の研究は、“An Environmental Golden Rule and Sustainable Development"として公表される予定である。 4.なお、実証の問題に関しては、今年度は研究が及ばなかったが、今後この分野における研究に着手する予定である。
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