研究の目的であったメンガー宛ボェ-ム=バヴェルクの書簡77通のトランスクリプション(翻刻)をほぼ終了した。これは全体の95%ほどにあたる。その内容はいずれ、ディスカッションペーパーで公表する予定でいるが、それまでには、まだ、内容分析を継続して行う必要がある。さらに、ドイツ語のミスを訂正するために継続してネイティヴの補助を得る必要がある。また英語圏の研究者にも利用可能なように英訳を付して公表することも必要と思われる。 現在の段階で得られた知見としては、 1)インスブルックに赴任したボェ-ム=バヴェルクが帝国首都ヴィーンに戻ることを切に希望していたこと。 2)メンガーの利子論批判を書簡においても展開していること。 3)1880年代の前半から後半にかけて次第にメンガーへの態度が主従の関係から対等な論争相手という位置づけに変わってきていること。 4)ボェ-ム=バヴェルクがザックスなど他のハプスブルグ帝国内の経済学者とライバル意識を持っていたことなどである。 以上の点から少なくともこの資料がオーストリア学派を理解する上で大変重要な意味をもつものであるということが明かとなった。 なおトランスクライブ(翻刻する)際、オリジナルコピーをスキャニングして実行したものの、元のスキャンのデータはMOディスクの事故のために失われてしまった。今後画像データのバックアップなどの対策を十分に考慮する必要がある。
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