研究概要 |
本研究の第一段階として,「市場経済移行基本図書」,「東欧各国移行資料」,「東欧各国経済統計書」の収集を行い,ハンガリー,ポーランド,チェコといった東欧における移行先進国だけでなく,ル-マニア,ブルガリアという移行後進国における市場経済への移行戦略の基本的な整理を行った。さらに,統計資料に基づいて,これらの国における経済パフォーマンスと採られた移行戦略との関連について概略的な考察を行った。これによれば,ハンガリーを除く,市場経済への移行に相対的に遅く乗り出した国においては,インフレ対策及び為替レート安定化を中心としたマクロ経済安定化政策を短期間に集中して行うことにより安定した経済・政治基盤を作り出し,私有化を含めたその後のシステム移行に備えることが望ましいことが分る。 さらに,このような観点から,同じく市場経済への移行を図っているロシア経済を見ると,エネルギーを除き価格は1992年初めに一挙に自由化されたものの,その後,企業の財務規律の確立のための政策が不十分であり,このため財政赤字とインフレの拡大及び為替レートの切り下げが続いており,マクロ経済安定化目標は達成されていないことが分かる。そして,この経済目標の未達成が政治の不安定性を生み,私有化を含めた経済システム移行を遅らすという悪循環に陥っている。 東欧における移行戦略と経済パフォーマンスとの関連については今後順次論文を発表する予定である。また,ロシアにおけるマクロ経済安定化問題については本資料で示す論文を発表した。
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