研究概要 |
日本の1993年の経常収支黒字が,1,317億ドル(対GDP比3.1%)と過去最高となり,日本の経常収支黒字削減を求める要求が一段と高まっている。他方,米国の経常収支赤字は,93年には1,092億ドルにのぼっている。経常収支は,国民経済計算上は事後的に貯蓄-投資差額に一致し,資金循環勘定より海外部門の資金過不足にも一致する。貯蓄-投資バランス・アプローチによれば,日本の経常収支黒字の拡大は家計部門の貯蓄率が安定しているのに対して,バブル崩壊後の法人部門の投資超過が縮小したことが背景にある。他方,米国では80年代に入って政府部門の大幅な投資超過が続いており,民間部門の貯蓄率が低いままである。したがって,大幅な財政赤字が米国全体での投資超過をもたらし,経常収支を赤字にしているといえる。日本の貯蓄超過が資本流出という形で米国の貯蓄不足を補っていると考えられる。そこで,財政・金融政策が日米の経常収支にどのような効果を及ぼすかを調べるために,マッキビン-サックス・グローバル(MSG)モデルのresearch versionをW.マッキビンより1年間のリ-ス契約で使用し,以下のようなシミュレーション結果を得た。(1)日本が永続的に政府消費(対GDP比)を1%増加させた場合,日本の内需拡大は米国の経常収支を黒字化する一方で,日本の経常収支を赤字化する効果を持つ。(2)米国が永続的に政府消費を1%減少させた場合,米国の財政赤字の削減は米国の経常収支を改善させ,日本の経常収支を削減する効果を持つ。(3)日本が永続的にマネーサプライを1%増加させた場合,米国の経常収支はわずかではあるが赤字になり,日本の経常収支は黒字になるがその程度は小さい。(4)米国が永続的にマネーサプライを1%増加させた場合,米国の経常収支は黒字になるが,その効果は減衰していき,日本の経常収支は初めは赤字になるが,途中から黒字に転じる。
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