テクノポリスの現状を把握するために、全国26カ所のテクノポリス地域について、1986年以降の工業や人口に関するデータの収集・解析を行った。その結果、これら地域におけるハイテク化の進展、部品産業における地域的な連関の確立などが見られ、テクノポリス計画が当初企図していた成果が現れつつある。また人口のデータから、テクノポリス地域を「新構想型」「誘致型」「遠隔地型」に区分した。新構想型は1990年以降のテクノポリス第II期計画の方針を反映した地域であり、こうしたテクノポリスが出現していることは評価されるべきである。このように、工業開発の側面からのテクノポリスは成果を上げているといえる。 しかし、地域開発としてのテクノポリスは、広島中央テクノポリスを例としたメッシュデータによる地理的分析から、「まちづくり」の側面が欠落していることが明らかになった。これは、テクノポリスの定義であった「住」「産」「学」の有機的連携が地理的に機能していないことでもある。さらに企業行動に注目すると、誘致企業と地元企業との技術的なギャップの存在、ネットワークの欠如が明らかにされた。しかし、最近ではテクノポリス地域の産業の集積を背景として、企業が進出するケースも見られるようになっている。 このようにテクノポリスの現状を検討・評価すると、工業の面では成功、地域開発では現在のところは十分な成果が上がっていないという結論である。後者は長期的かつ広域的な視点が要求される。そのためにはテクノポリスのみならず、リゾート開発なども含め地域開発の評価が必要である。いずれにしても、80年代以降の民活型の地域開発の成果の検討及びその是非は今後の重要な研究課題である。
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