商店街商業組合確立の意義(自由主義経済と統制経済のはざまで) 戦前期の中小小売商問題は様々な理由によるが、大別すると外因と内因とになる。主な外因としては、百貨店や産業組合の発展により、中小小売商の市場が浸食されたことがある。内因として有力なのは、小売商の過多過小現象であったが、中小小売商自らの問題なので小売商の運動目標とはなりにくく、従って政治問題ともならなかった。 商工省の政策担当者の認識では、問題は百貨店や産業組合ではなく、小売商の過多過小であるとの認識が強かったようである。当時の統制経済を背景として、中小小売商にどのような手法により統制をかけていくのか、という点が課題となったのであり、その結論が商業組合という協同組合による自主的統制であった。統制の担いの手としての商業組合は強制加入でなく、アウトサイダーが存在する欠陥があった。だがこれは産業合理化から見た場合長所ともなる。最大のアウトサイダーである百貨店は中小小売商主導の商業組合に統制されずに済み、同業組合のように営業上の弊害矯正を理由として個々の事業者やそこで働く労働者に自由を認めず、経営方法等の改善を阻害する可能性も減らしたのである。 商業組合の特徴は統制事業と営利的・積極的事業の両方行い得ることにあった。複数業種を横断する商業組合では、業種特性の違いにより共同仕入れや共同利用施設といった積極的な事業による利益が見えてこないという主張があり、このような組合に対する評価は当初低かった。この「常識」を覆したのが、商店街商業組合であった。地域を軸として、各商店の営業方法に統制をかけながら、積極的な事業をそのうえに立って行う、という手法が商店街商業組合ではとられていた。この自主的な統制事業を経営改善のために活かした点に商店街商業組合の意義が認められるのである。
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