研究概要 |
日本の企業組織の特徴の一つに,「ヒエラルキーに沿った情報構造に加えて,水平的コミュニケーションを引き起こすメカニズムが重要な役割を果たしている」という特徴があげられる。しかし,伝統的責任会計は職能別組織,今日の日本とは違った環境を前提として構築されていたため,種々の問題が生じている。 本研究では,第一に,管理会計上のコントロール・システムの海外移転の問題を考察するために,日本型経営やリエンジニアリングの内容を検討した。リエンジニアリングは,日本的経営を開会に適用した事例を含んでいる。その本質の一つである職能間の壁を低くするための手段として管理経理技法が役立ちうることを指摘した。 第二に,(1)職能横断的組織の意義を明らかにし,米国における水平的相互作用に関する研究を検討した。(2)日本企業においては,人事評価を初めとする米国企業と異なったインセンティブや諸条件が存在していることから,米国における研究とは異なった結果が生じる可能性があること,そして日本ではどのような研究を行うべきかを提示した。 第三に,今後の研究課題は以下のとおりである。部門間の情報交換に関する米国の研究は,業績管理会計上どのような意味をもつのか。水平的情報交換を促進する要因としては会計システム以外の方法も存在することを指摘したが,これまでの業績管理会計の不備がその抑制要因として作用するならばどう改良すべきか。ABM,ABBを用いた業績管理会計の構築,業績管理会計と他のコントロール技法との相互作用,水平的調整と垂直的コントロールの関係を明らかにすることも今後の研究課題である。
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