現在の米国の会計規制において、SECがきわめて重要な役割を果たしていることは周知のとおりであるが、具体的にどのような役割を果たしているか、そして、設立当初からそうであったのかという点についてはあまり検討されていないため、その点を明らかにするべく本研究は開始された。 昨年度より継続中のU.S.スティール社の損益計算書作成実務の検討の結果、1936年に損益計算書様式の変化があり、また他の大企業のマニュアル・レポートの検討においても、同様の変化が見られることが明らかになった。その前提には、1934年に設立されたSECの存在があり、そこからForm 10-Kが1935年12月に公表され、各企業の損益計算書作成実務に影響を与えたのではないかという問題をさらに見い出したが、これについては現在検討中である。 一方で、現在の米国において、SECが具体的にどのような形で会計規制に影響を与えているのかについて、特に環境負債会計との関連で検討し、1934年証券取引所法により会計基準設定権限を与えられたSECからその権限を移譲されたFASBとそのEITF(緊急問題特別委員会)との関係も検討した。環境負債の会計については、EITFから合意書が公表され、そこでは環境負債と損害補填金(保険金)との相殺や環境負債の割引の問題が議論されている。SECはこの議論にスタッフをオブザーバーとして出席させて意見を反映し、また同じ問題に関連して、スタッフ会計公報第92号を公表している。その検討のなかで、SECは、FASBとそのEITFの議論を尊重しながらも、独自の判断を行使している姿が明らかとなった。
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