研究概要 |
本年度の研究において以下の成果が得られた. まず,証券価格の生成プロセスとして,次のようなプロセスを想定した.日々公開される情報は証券の収益率に影響を与え,その変化の分布は平均0,分散σ^2の正規分布に従うものとする.また,1日に公開される情報の数は確率変数であり,数種類の情報源が存在する.例えば会計情報や業績予想に基づく収益の変化や,為替や金利の変化といった経済環境の変化がこれに相当する.このような,生成プロセスに従った証券の収益率分布は混合正規分布として表され,このような収益形成過程は,従来より混合正規分布仮説といわれ,その仮説検証のために数々の実証研究がなされてきた. 本年度の研究においては,まず上述のプロセスによて株式の収益率が生成される場合について,合理的な投資家の投資行動を明らかにした.投資家は,従来の平均-分散型の意思決定によっては,その期待効用を最大化できない.すなはち,より高次のモーメントを考慮して意思決定を行う必要がある.本研究では,4次までの投資家の意思決定基準を,相互情報量の最大化問題として定式化した.ここでは,投資家のリスクに対する態度が,情報量として与えられている.また想定した株式の収益率変化を引き起こした経営及び経済環境の変化との関連も明らかにされているため,環境の変化→収益率の変動(リスク)=情報量という関係を得ることもできる. これらの関係は数値的に与えれるが,会計・業績あるいは経済変数の選定,および価格との直接的な関係を明らかにすることが残された課題である.
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