本研究は、原価企画における目標原価情報が知識創造行為を促進するメカニズムを探求し、ある条件の下で厳しい目標原価情報を与えることが知識創造行為を促進するという仮説を聞き取り調査によって検証しようとした。この仮説はある程度確認された。具体的には、大手家電メーカーに於いて、今までとは異なる新技術を用いなければできない新製品を開発設計する場合に、意図的に目標原価を従来モデルに比べて厳しく設定するとの証言が得られた。しかし、目標原価を厳しく設定しさえすれば知識創造行為が創発する、とは言えないことも発見された。つまり、目標原価の厳しさの他に色々な条件が揃わなければ、知識創造行為は生じないことも判明したのである。この問題は今後の研究課題となった。 文献研究から、知識創造が組織成員の行動やコミュニ-ケションを通じた相互作用の結果、情報共有が起こり知識創造へと繋がることが判明した。このことは先の知識創造行為の創発条件の研究に大いに役立つであろう。 研究は以下の手順に従って実施された。 1.原価企画における知識創造行為を具体的に確認する目的で聞き取り調査を実施した。 調査企業--シャープ(天理)、シャープ(大阪)、東芝(本社) 2.「管理会計情報と知識創造行為との関係の仮説」をさらに完成度の高いものにするために文献研究を行った。 3.1と2との研究から、本研究の今後の研究課題を作った。
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