研究概要 |
1.高次元の分岐の局所理論について 局所理論の多くは完備離散付値環のガロア群Gに対するフィルター付けを与えることに帰着される。研究の結果剰余体が完全体と限らない一般の場合にも望ましいフィルター付けを定義することができた。古典的な場合にはエルブラン流の上付きフィルター付けとフォンテーヌによるフィルター付けがあり、両者は簡単な関係にある。一般の場合にも双方の拡張として得られるフィルター付けが存在する。 それぞれをF、F'とおくと、以下の性質がある。 a)F,F'共に非負実数により添数付けされており、分離的なフィルター付けを与える。 b)自明でない最初の商はFにたいしては最大不分岐拡大の相対ガロア群となり、F'にたいしては最大従順拡大の相対ガロア群となる。 c)他の部分商はFにたいしては剰余体標数pで消えるアーベル群となる。F'にたいしても1以上の添数の範囲では同様のことが成り立つ。 d)古典的な剰余体が完全体の場合には以前からのフィルター付けと一致する。 部分商の完全な決定はまだ行われていないが、その構造に対して基本的な予想は立っており、斉藤毅氏(東大数理科学研究科)による予想と合致する。 Fは数論的代数幾何学において有効な手段である対数的構造と深く関係しており、対数的不分岐射からのずれをはかる量である。 2.大域的理論(従順分岐の場合)について 一般のスキームに対しては未だ分岐の理解が完全でないため分岐を従順なものに限り研究を行った。 一般のスキームXとその部分スキームYにたいし、従順層から定義される従順な管状近傍という概念を定義した。定義にはリジッド解析幾何学における構成法を使う。 対数的非特異スキームにたいしては対数的エタール位相が定義されるが、グロタンディークの純正予想を認めれば従順管状近傍のコホモロジーなどの位相的量は対数的エタール位相に関する不変量と等しいことが以前の加藤和也氏(東工大)との研究により示せる。対数的エタール位相は計算をしやすいため、比較ができることが重要である。 管状近傍の考え方を使うと広中特異点解消との関係も明らかとなった。つまり、強い形の広中特異点解消定理が成り立つと仮定すると(標数0の時や2次元以下の時には正しい)従順管状近傍のコホモロジーが計算でき、純正予想自身を導くことができることがわかった。 なお、その後ガバ-(イスラエル)が純正予想を導けるとアナウンスした(1994年7月)。 以上、1、2については現在論文を準備中である。
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