数論においてL-functionと呼ばれる一群の関数の研究は非常に重要なテーマである。GL(2)の保型表現の3つ組から定義されるいわゆるtriple L-functionについてはP.B.Garrettによる積分表示の発見(1985)により、その研究の道が開かれた。筆者は修士論文においてtriple L-functionの解析接続および関数等式を証明し、学位論文において極の位置を決定した。この結果を用いて保型形式の持ち上げの存在を示すにはtriple L-functionのgamma因子を計算する必要があるが、この計算の基本的部分を解決して現在論文を準備中である。 一方、学位論文においては、symplectic群Sp(n)上のEisenstein級数の解析的性質も詳しく論じたのであるが、Eisenstein級数をさらに詳しく研究するには、いわゆるtheta関数との関連を調べることが不可欠である。具体的には、Eisenstein級数の特殊値あるいは留数をtheta関数によって表示するSiegel-Weil型の公式を示すことが重要である。このSiegel-Weil型の公式を帰納的に示すためにEisenstein級数のFourier-Jacobi係数を計算することが必要になるが、この計算をJacobi形式の一般論と合わせて論文にまとめ発表した。この結果を利用してEisenstein級数の留数をtheta関数で表すSiegel-Weil型の公式を特殊な場合ではあるが証明し、現在論文を投稿中である。
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