積分不変量としては、部分多様体の第二基本形式の成分を不変式に代入し積分した量を考える。部分多様体の体積は、その特別な場合になっている。部分多様体の体積に関する積分幾何学の種々の公式は、おもに定曲率空間において定式化され、幾何学的な問題の解決に使われていた。定曲率空間における積分公式の被積分量は定数になるが、一般の等質空間における積分公式での被積分量は、定数ではなく複雑な量になる。その被積分量やそれを積分した積分不変量を上から評価することを考え、その方法をいくつか示した。二つの部分多様体の内で一つを群の変換で動かし、もう一方との交点数を群上の関数とすなして積分し、この積分量で部分多様体の体積の下から評価の得た。その際、Lie群の表現論やコンパクト対称空間の基礎理論が重要な役割を演じた。また、部分多様体のPoincare双対に対応する微分形式の積分を考えることにより、キャリブレ-シヨンとの関係を明らかにして、体積最小性などの変分問題に応用した。位相幾何学で扱う交点数は符号付き交点数であるが、積分幾何学で考える交点数は単純に共通部分の個数を交点数としている。符号付きの交点数よりも単純な交点数の方が大きくなるので、ホモロジー類内での部分多様体の体積最小性をキャリブレ-シヨンで得るよりも、交点数の積分によって得る体積の不等式評価の方が、よりよい評価になっている。この手法は、部分多様体の第二基本形式の成分を不変式に代入し積分した量を考えることによって、曲率等の積分量の変分問題への応用も期待される。現在、この方向の研究を計画している。曲率等の積分量の変分問題に関する研究はすでにあるが、先行する研究との関連にも興味がもたれる。曲線に関しては、Fenchelの定理やFary-Milnorの定理等があり、高次元の場合には、Chern-Lasholの定理がある。さらに、積分公式に現れる被積分量と位相不変量との間の関係があることが、明らかになってきているので、これに関する研究も計画中である。多くの幾何学的な積分不変量と位相不変量との間に、不等式関係があるのではないかと期待している。
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