研究概要 |
本研究は、定曲率セミ・リーマン空間形内へのリーマン多様体からの微分可能はめ込みについてその幾何学的諸性質を探求するという大きなテーマの一環をなすものとして行われた。セミ・リーマン空間とは、リーマン空間も含めて、正定値とは限らないが計量を定義された多様体を意味するが、ここでは指数(計量の負固有値の数)が余次元と一致する特別な場合についてのはめ込みを研究対象した。M^<m+p>_p(C)を定曲率c,指数p,次元m+pのセミ・リーマン空間形とし、その空間的部分多様体M^mの平均曲率ベクトル場が平行な場合について、(体積極大な場合、つまり平均曲率0の場合を含めて)考察し、次のような結果を得た。 1.c=0のとき、M^mのGauss写像はあるHadamard多様体Nに値をもつが、平面以外の完備なM^mについては、その像はNの有界領域には収まらない。 2.c>0のとき、コンパクトなM^mが法接続が平坦になるようにはめ込めるのはリーマン球面S^m(r)の場合に限られる。 今後は、相対論的にも重要な空間である指数1計量のローレンツ空間内の部分多様体に注目して、幾何学的興味からだけでなく物理的視野からの研究も参考にして考えていく予定である。また、Gauss写像は部分多様体の幾何的・位相的性質を如実に表して伝える写像であり、またさらに、ガウス写像が別の部分多様体を与えているとみなせる場合におこるある種の相対性は、研究対象の統合をはかることに有用ではないかと思われるのでさらに深く考察していきたい。
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