研究概要 |
今回の研究目的では、境界を持つ4次元多様体の位相構造と、複素代数曲面の階数2安定ベクトル束のモジュライ空間の研究を主なものとした。 そのうち、安定ベクトル束のモジュライ空間の研究については発表する段階までたどりつくことはできなかった。今後の研究方針としては、モジュライ空間の小平次元などの複素解析的量、特異点(すなわち、H^2(X,adε)≠0であるベクトル束E。ただし、adεはEのtracefreeなendmorphisms全体のなす層)のまわりの状況を調べる等の問題に焦点をしぼって研究をしたい。 境界を持つ4次元多様体の位相構造については問題を以下のように設定して考察した。4次元多様体は、向き付け可能な、コンパクトかつ、連結な位相(または可微分)多様体で、その基本群が無限巡回群に同型であるものとする。また、境界の3次元多様体も連結とし、その包含写像の基本群上に誘導する準同型写像が全射であるとする。このとき、3次元多様体を固定した時、上の状況を満足する4次元多様体は、無数に存在するが、そのときの、最小の2次元Betti数を位相的カテゴリーとSmoothカテゴリーに関して求め、そのふるまいについて研究した。3次元多様体Mに対して、上記のような各々のBetti数をβ^<TOP>(M),β^<DIFF>(M)と書き表わすことにする。得られた成果を簡単に述べると、1.)任意の0以上の整数nに対して、β^<TOP>(M)=β^<DIFF>(M)=nとなるホモロジーS^1×S^2,Mが可算無限個存在する。2.)β^<TOP>とβ^<DIFF>は差がある。すなわち、β^<TOP>(M)<β^<DIFF>(M)となるホモロジーS^1×S^2,Mが存在する。である。これらの研究成果については、11月に開かれた研究集会「Art of Low Dimensional Topology」にて発表した。
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