研究概要 |
今年度はウィルソン基底及び局所三角基底を用いて、増大する表象を持つシュレディンガー作用素あるいはその拡張としての大域楕円型擬微分作用素の研究を行なった。その結果、これらの基底による大域楕円型擬微分作用素の近似対角化を与えることができた。局所三角基底を用いたある種の作用素の近似対角化に関してはBradie-Coifman-Grossmannの研究があるが、大域楕円型の擬微分作用素の近似対角化の結果は新しいものである。この近似対角化を用いることにより作用素に関する様々なアプリオリ評価を証明することができ、それらを用いて作用素の本質的自己共役性に関する定理や作用素の自己共役拡張が離散スペクトルのみを持つことなどが証明される。また、従来のものとは異なる、作用素の表象のある値を用いた固有値の漸近評価が得られ、さらに固有値の個数の漸近評価を与えることができる。大域惰円型の擬微分作用素の研究はBerezin-Shubin,Grossmann-Loupias-Stein,Helffer-Robert,Vorosなどにより研究されているが、本研究における手法は彼らのものとは異なるものであり、また彼らの理論では扱えない表象のクラスに対応する作用素についても様々な性質を証明することができる。これらの結果の証明に用いられるアプリオリ評価式は、モデュレーション空間と呼ばれる関数空間のノルムに関するものである。このモデュレーション空間における擬微分作用素の作用の仕方の研究は今まで行なわれていなかったものであり、本研究により明らかにされたものである。
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