研究概要 |
次の3つの異なる分野 i)不定値な計量をもつ等質多様体における不連続群(特に一葉格子)の存在問題 ii)非コンパクト不定値Stiefel多様体上の離散系列表現の構成 iii)非コンパクトリーマン多様体のラプラシアンの点スペクトラム(砂田氏の提起した問題)において研究代表者が最近数年行ってきた研究の接触点において,ユニタリ表現論の新しい結果が生まれつつあった状況で,当該研究は出発した。 さて,半単純の既約ユニタリ表現の中で特に重要なクラスである表現は楕円軌道のindefinite-Kahler polarizationによる幾何学的量子化として得られるAq(λ)という表現であるが,当該年度の研究の主なものは, 1.既約ユニタリ表現Aq(λ)を簡約部分群に制限したとき連続スペクトラムが存在しないための十分条件を証明した。 2.1.の応用として,主な非コンパクト等質多様体について離散系列表現が存在するかを決定した。 3.1.の応用として,球調和関数における古典的な有限次元表現の分岐束を非コンパクトな設定に拡張し,無限次元ユニタリ表現の制限公式を証明した(デンマークのOrsted教授と共同研究)。 4.1.の応用として,ある局所エルミート対称空間のホッジ構造において,整数論から予想されていた消滅定理を証明した(東京大学の織田孝幸氏と共同研究)。 5.1.とは逆に,連続スペクトラムが存在するための十分条件を証明した。 6.曲面の積分幾何の逆公式を無限次元多様体の上での解析を行って証明しこれを等質多様体の調和解析に応用した。(アメリカのGindikin教授との共同研究) 7.一般の実線形簡約リー群の等質多様体に離散部分群が作用しているときこの作用が固有不連続になるための必要十分条件を証明した。
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