この研究においては主にλ-lemmaの応用について考察を行った。その結果、以前から懸案であったTeichmuller空間のBers埋め込みに関する次の予想:IntS(Γ)=T(Γ)を特にΓが有限生成純双曲的第2種Fuchs群の場合について証明することが出来た。証明のポイントはIntS(Γ)の元に対応する領域を擬等角写像を用いて変形することにあるが、その時にT(Γ)に入らないとすると矛盾が出ることを示すのにIntS(Γ)の(局所)擬等角等質性が用いられ、その部分でλ-lemmaが本質的に用いられる。この証明はGehringによって既に証明されていた最も単純な場合:Γ=1の結果の別証明にもなっている。直観的には擬等角写像を用いた変形の方が分かりやすいように筆者には思われる。(この結果は“On the space of schlicht projective structures on compact Riemann surfaces with boundary"というタイトルで現在投稿中である。) なお、当初の目標であったより一般のリーマン面の正則族についてはまだ研究の緒についたばかりでまだそれほど重要な結果は得られていないが、上記の研究の副産物として双曲的平面領域の解析的普遍被覆写像のSchwarz微分の双曲的ノルムが有限であるという性質と“uniformly perfect"という性質との間に著しい関係があることを見いだした。これらの性質の同値性については既にPommerenkeが指摘しているが、筆者はより精密に定量的な評価を与えることに成功した。
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