超有限次元行列環によるII_1型因子環の構成はすでに成功している。そこでIII型因子環の構成が問題になるが、Powers因子のIII型構成を見てみると、増大する行列環の作るC^*-環上に適当な状態4を考え、その4によるGNS-表現を考えている。この方法をまねてIII型因子が構成できるであろうと考えられているが、そこにはいくつかの難点があることが判明した。それはまず、超有限次元行列環(今これをMとする)上に適当な状態4を定めるのは実に容易に出来るが、その4により出来る零空間N_4={χ_tMl4(χ+χ)【similar or equal】0}が両側イデアルになるための必要十分条件が、4とトレース状態τが同値になるということであるという結果を得た。これは結局4が両側イデアルになるのは本質的にII_1型を構成する場合に限られることを意味しており、III型の場合はII_1型のように単純にいかないことがわかった。また、状態4がKMS状態であれば、Powers因子の場合と同様な議論が可能であるが、先の結果は実は4がKMS^4状態ではないということも示しているので、GNS表現を考える場合でも、従来にはなかった新しい方法論が必要となる。III型構成は比較的楽観視されていたが、このように、その陰にいくつもの困難のあることが判明した。しかし、難点がわかったことは大きな進歩であり、今後の研究の方向性を定める助けにもなった。
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