研究概要 |
数理物理に現れる重要な非線型問題の一つである非圧縮性粘性流体の安定性の問題に取り組み,1994年度に得られた研究成果の主なものを以下に報告する。 重力の効果のもとでの空間3次元の熱対流の問題(Boussinesq近似による非線型偏微分方程式系)について,球体の外部領域における熱伝導定常解の安定性および擾乱の漸近的な挙動に関するL^2理論が公表された(雑誌Nonlinear Analysis:Theory,Methods and Applications,1994年)後,内部領域における定常解の存在と指数関数的な漸近安定性に関する結果も得られ,雑誌Journal of Mathematical Analysis and Applicationsに掲載予定である。 その後,球体とは限らない(従って,必ずしも熱伝導定常解が存在しない)外部領域において,L^P空間で安定となる定常解のクラスを,重力のクラスとの関連の中で決定した(1994年7月の早稲田大学での日本台湾合同シンポジウムなどで講演,また現在論文投稿中)。上のクラスは,あるLorentz空間によって与えられ,その証明は関数解析的に行われる。 また,回転する3次元物体のまわりのNavier-Stokes流体の研究も開始した(継続中)。この問題を固定外部領域における偏微分方程式にかき直すと,コリオリカ(流速と角速度の外積)および無限遠方で1次増大する境界条件が現れ,今のところ弱解の存在が知られているのみである。L^P空間における強解の存在を証明するために,無限遠方の流れのまわりで線型化した方程式を考察し,その基本解やresolventを構成した(1994年12月の九州大学関数方程式セミナーなどで講演,また現在論文準備中)。
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