研究概要 |
従来から研究を進めている速い(高レイノルズ数の)流れ問題の高精度解析手法,上流下流点選択型有限要素スキムを,移動境界問題に適用すべく研究を行った.方針は,非定常ナヴィエ・ストークス方程式を時間発展的に解く際の各離散時刻において、要素を節点の流速に対応して移動させる.ラグランジュ座標型の方法である.この解法を速い計算速度で実現させることを目標に,以下の研究を行った. 1.要素が移動するので,有限要素近似に対応する各時刻の全体剛性行列(有限要素方程式の最終形をAx=bとすれば,行列Aとベクトルb)は変化する.このため行列を組み立てないコードを開発した.ソルバーに共役勾配法(CG法)を用いる場合,行列Aに関する演算はベクトルyとの積Ayのみであり,これを高速に計算することが鍵となった.実際には,適合離散化ポアソン方程式BMB^Tp=r(Mは対角行列,B^TはBの転置行列)を解くので,積Buと積B^Tpの2つをエレメント・バイ・エレメント型に高速に計算するコードを開発した.東京大学大型計算機センターのベクトル型スーパーコンピュータ上のある計測では,従来法よりも,16倍程度の計算速度を達成した.この成果は,数理解析研究所講究録に発表予定である.また,日本数学会,日本応用数理学会,日本数値流体力学会において口頭発表を行った. 2.次世代のスーパーコンピュータである大規模並列計算機上の実現性について検討した.並列計算機では領域をプロセッサ数の部分領域に分けて解く方法が有力となっている.メモリ分散型の機種に関して,前項で研究した手法の適合性が良いことがわかった.コードは現在開発中であり今後成果の発表を行う予定である.
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