無限粒子系マルコフ過程について、特に半空間における吸収壁ブラウン運動による粒子系で、各々の粒子が互いに独立で、しかも境界から粒子の流入がある場合について調べた。得られた結果は次のとおりである。 1.測度の空間の上の作用素である生成作用素をマルチンゲ-ル性を用いて特徴づけることに成功。 2.標本関数の滑らかさについて、その滑らかさを表すヘルダー連続性の指数が出発点のクラスに応じて1/4から1/2まで変わることがかなり精密に示せた。 3.あるコンパクト集合にある時刻までに到達する粒子の割合についての時間無限大での挙動を調べ、それを平衡過程と呼ばれる無限粒子系マルコフ過程に応用することにより大数の法則と中心極限定理を導くことに成功。 これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である。 また境界からの粒子の流入があることによって起こる問題が一つあり、それは本質的にポアッソン分布に従う独立でない無限個の確率変数が有界か、非有界かという問題に帰着される。しかし独立でないことと無限個であるがためにかなり解析が難しく、これを解くことは確率論上、大変意味がある。現在それについて研究中である。 今後これらの理論を発展させ、測度の空間の上の汎関数(ポアッソン汎関数)の解析にも応用していくつもりである。
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