研究概要 |
線形計画問題その他に対する有力な計算手法として認識されている内点法は反復法であり,各反復において探索方向を与えるニュートン方程式を如何に効率的に解くかがその実装の鍵になる.特に大規模な問題に対しては,反復の初期段階からこれを正確に解いていくことは実用的ではなく,CG法などの反復法を用いて近似的に解いていくことが得策であると考えられる.本研究では,有限次元の大規模問題だけではなく関数空間上の数理計画問題として表現された連続時間最適制御問題をもその対象とし,各反復における探索方向を近似的に与えた時に内点法によって生成される点列の大域的および局所的性質を相対誤差を用いて特徴づけることが主な目的であった.そこでまずヒルベルト空間上の線形計画問題に対して,上述の意味での近似が局所的収束性に及ぼす影響を相対誤差を用いて特徴づけた.反復法を用いてニュートン方程式を近似的に解くことに伴い,有効なプリコンディショナ-の開発が不可欠であるが,特に最適制御問題のような特殊構造を持つ問題に対してはこの構造を利用した良いプリコンディショナ-の構成が期待できる.次に以上の結果を踏まえた上でヒルベルト空間上の2次計画問題について考察し,計算機による数値実験を通してその有効性特に状態制約条件つきLQ最適制御問題に対して良好である事が確認された.以上の成果については,現在までに学会等で7件の発表(うち2件は国際会議)を行ない,さらに2件国際会議で発表する予定である.また論文として学会誌等に2編掲載あるいは掲載予定であり,その他1編が国際会議の会議録に掲載される予定である.今後の課題として,より一般の非線形計画問題への拡張が挙げられるが,特に次のステップとして逐次2次計画法の枠組みの中での近似内点法の実装,さらにはその状態制約条件つき非線形最適制御問題への適用を考えている.
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