今年度の研究では当初の計画通り、X線天文衛星「あすか」を用いてZ=2.23のクェーサーPKS0237-233を中心とした領域を3点計100ksec観測し、解析的研究を行った。Z=2.23とは宇宙年齢の約4割さかのぼった時点または、40億光年かなたに対応する。この領域の観測を解析した結果、PK0237-233以外にも複数(10個程度)のX線天体が検出されつつある。比較的明るいPKS0237-233についてはエネルギースペクトルが得られ、photon indexΓ〜1.5となった。Rosat衛星による宇宙背景放射および、それに寄与する点X線源のphoton indexはΓ〜2.1であり、「あすか」にエネルギー範囲での背景放射(Γ〜1、4)とは矛盾があった。PKS0237-233のような遠方のクェーサーが多数存在すればこの矛盾への解決の手がかりとなることが期待される。このため、PKS0237-233以外に検出された天体についてもエネルギースペクトルの情報をえるべく、解析をすすめている。40ksecの観測で、X線光子が100個程度という微弱なものもあるので、「あすか」GIS検出器のバックグランド特性の把握も含めて、慎重な解析を行っている。これは宇宙背景放射への遠方X線天体の寄与をさぐる上で貴重な効果となることが期待されたため、平成7年度にも「あすか」による追加観測を提案し、国内の研究者による審査をへて、採択されることとなった。このため、成果として論文に発表するのは平成7年夏の観測以降となるが、暫定的な報告を箱根「あすか」研究会および日本物理学会年会等で発表している。また類似した天体3C346についても米国の研究者と共同観測を行った。
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