研究概要 |
気球搭載用偏向度硬X線検出器の開発を行うために,NaI(Tl)シンチレーター(1×7×10cm^3)とCsI(Na)シンチレーター(1×7×23cm^3)を光学的に接合したフォスウイッチ結晶を購入し,基礎的な実験を行った。現在デザインを進めている検出器は散乱体としてプラスチックシンチレーターを,吸収体としてNaI(Tl)シンチレーターを,そしてコリメーターとしてCsI(Na)シンチレーターを使用している。そしてこれらのシンチレーターからの信号を光電子増倍管で読み出す。NaI(Tl)とCsI(Na)は,光学的に接合されたフォスウイッチ結晶であるため,光電子増倍管は2つのシンチレーターにそれぞれ接合する必要はなく,どちらか片方に接合すればよい。そのため検出器をコンパクトに製作する事ができる。以上の様なメリットが存在する一方で,シンチレーター中で発生した光を光電子倍増管に集光する事は,別々に光電子倍増管を接合した場合よりも一般に難しくなる。特に今回の様な細長い結晶では光の集光が難しいと考えられるため,どの程度低いエネルギーまで読みだす事ができるかを実験的に調べた。NaI(Tl)とCsI(Na)にそれぞれ60keVのX線を照射し,その波高分布を調べた所,ノイズと完全に分離して信号を読みだす事はできなかったが,信号のピークチャンネルは明らかに観測する事ができた。また設計中の検出器では,NaI(Tl)からの信号とプラスチックシンチレーターからの信号のコインシデンスで最終的にトリガーをかけるため,よりノイズを落とす事ができると考えられる。そのためプラスチックシンチレーターとのコインシデンスを取って,同様の実験を行う事を計画している。さらに検出器の1つのユニットを組み上げ,計画中の偏向度検出器でどの程度の性能が得られるかを実験的に調べる事を計画している。
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