今年度は、カイラルゲージ理論を格子上で定式化する方法として最近提案され注目を集めているカプランの方法について研究した。この方法は2n+1次元のベクターゲージ理論に1次元方向にdomain-wall型の質量項を持たせ、その効果で2n次元のdomain上にカイラルフェルミオンを作り出そうとするものである。ここではdomain上の2n次元空間を我々の物理空間と解釈する。 代表研究者はこの方法について以下の点を研究した。 (1)外場であるゲージ場に対する有効作用を2+1次元と4+1次元のQEDの場合にフェルミオンの1ループで計算した。この計算結果を用いて、カイラルフェルミオンの寄与が正しく出ていること、ゲージ不変性の破れやアノマリーが存在すること、フェルミオン数非保存が可能であること、などが明らかにした。 (2)カプランの方法ではdomain-wall型の質量項が周期的であることからdomain上にカイラルフェルミオンが現れるだけでなくanti-domain上にカイラリティが逆のフェルミオンが必ず現れる。このこのとがこの方法によるカイラルゲージ理論の定式化を難しくしている。この点の改善を目指してoverlap formulaという方法が提唱された。代表研究者は、2+1次元のQEDの場合にoverlap formulaでのゲージ場の有効作用を計算した。その結果を用いて、ゲージ不変性の破れはアノマリーだけであること、anti-domainからの寄与がまったく無いことなど、overlap formulaが期待された性質を持つことを示した。
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