本研究の目的は、微細構造定数の相対的な時間変化|α/α|をテーブルトップの実験で測定する方法を基礎的な部分で確かめることであった。当初のデザインは、適切な関係の異なる波長のレーザー光源を同時にファブリ=ペロ-型干渉計に入射し、半年〜1年での変化を評価するというものであった。 1.レーザー光源の選択 2つの光源の波長がα^2の整数倍の関係にあり、実験に用いやすいものを検討した。光源を別々にすると、2台が共に安定化されなければならず、温度変化の影響によって発振器長が相対的に変化しては長期間での実験に向かない。光源は1つのレーザー発振器でなければ無理であることがわかり、計画を変更せざるを得なくなった。 2.光の分離と温度変化の影響 一つの光源を用いる場合、干渉計で測定するためにそれぞれの光に変調をかけねばならないので、光路を分離する必要があった。分離方法として回折格子を用い、グレーティング角の差を用いることにした。近接する多くの準位からの発振から特定のものを抜き出さなくてはならず、回折格子、レーザー発振の周波数安定化について高精度が要求される。共振器長とグレーティング角は長期間あけても再現できなければならないが、通常手にできる技術では、初期の目標を達成することは困難であることが判った。 3.ファブリ=ペロ-型干渉計に対する要求 632.8nmと543.5nmのHe-Neレーザー光の場合、両方の波長で干渉する条件は基線長約0.6μm毎に存在する。干渉計のフィネスを10^5にしたとして、光の蓄積時間は3μs程度になる。この間に基線長を0.6μm以上変化させて、それぞれの干渉光の位相をはからねばならないが、技術的にこれは可能であることが判った。 以上の困難を解決するため、レーザー周波数の安定度を詳しく調べる必要性を痛感し、その基礎実験のための設備の整備を開始した。
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